月別アーカイブ 6月 24, 2021

投稿者:終末医療学術集会

がんの終末医療|身体・精神・宗教など様々な観点からのケアの詳細を解説

がんは多くの人が罹患するようになりましたが、今でも不治の病として知られており、3人に1人はがんがきっかけとなって亡くなっています。がんの場合、終末期になるとひどい痛みが起こりますが、身体的な痛みの他に精神的や社会的な苦痛も味わうことが多いです。そのため医療機関では終末医療に力を入れており、緩和ケアを取り入れるところが多くなりました。終末医療はタブーのように感じますが、がんになった人をどのようにサポートしていくのか、患者本人がよりよく最期を迎えるにはどうしたら良いかを考えていく時代になっています。

終末医療の一つ緩和ケアとは

終末医療の中にある緩和ケアは、実際のところ終末期だけでなくがんにり患した時から始まります。厚生労働省では平成28年12月にがん対策基本法が改正されて、緩和ケアについて定義がされました。厚生労働省の定義では、病気によって伴う心と体の痛みを和らげることと位置付けており、がんと診断された時から行うことを推進しています。
実際がんになった場合、まず不安や落ち込み、そして悲しみなどの精神的な苦痛を感じます。身内に対しての申し訳なさや治療に関しての不安などが次々と訪れるため、自分では気が付かないうちにうつ状態に陥ってしまうこともあります。また終末期になると痛みや倦怠感を感じるようになり、痛みに関してはがん患者の7割は経験します。このようなことを少しでも和らげるために緩和ケアがあり、生活の質を向上させていきます。病院を起点に様々な方法で行われており、うまく連携をしながら進めていくようになっています。

ターミナルケアで行われているアニマルセラピー

ターミナルケアは終末期医療とも言い、末期のがんなど医療の力では直すことが難しい病気を抱えている人に対して行われます。病気を完治させるのが目的ではなく、残された時間を楽しく豊かに過ごすのが目的となっています。
ターミナルケアの一つであるアニマルセラピーは、動物の力を借りて行われるものであり、犬や猫など身近な動物と触れ合うことにより元気を取り戻していくことができます。特に犬とのふれあいは癒しの効果があるとされており、うつ病の改善の可能性もあります。がんになると落ち込む機会が増えるのですが、動物とのふれあいは、その落ち込んだ気分を一瞬でも取り除いてくれることがあり、時間が多ければ多いほど、改善していく可能性が高くなります。
アニマルセラピーは主に医療機関で行われており、出張という形で動物と触れ合うことができます。もちろんすでに飼っているペットでも癒しの効果があり、がんの人の気持ちに自然と寄り添っています。

終末期においても季節行事は重要

宗教もターミナルケアでは大切

緩和病棟に入院した場合、主に体の苦痛を和らげる治療を行っていきますが、同時に心のつらさも和らげていきます。あと何日生きるかわからないという精神状況の中ですが、いつかはそのような事実を受け入れていかなくてはなりません。緩和病棟では季節行事が行われており、最初は参加するのが辛いことが多いのですが、次第に受け入れるようになり、楽しむことができるようになります。
季節の行事は七夕やお祭り、クリスマスやお正月など1年を通じて行われています。七夕は願いを短冊に込めて飾ったり、お祭りは院内で夏祭りのようにミニ屋台を設置し、ちょっとした買い物ができるようになったり、クリスマスではツリーを飾るだけでなくプレゼントをもらったりなど家にいるときと同じことを行います。またそれぞれの行事の中では同時に音楽を聴くなど音楽療法も行われており、心を落ち着かせる治療も行われます。これらの季節行事は家族が招かれることも多く、一緒に同じ時間を共有できる良さがあります。

宗教もターミナルケアでは大切

日本には信仰している宗教の数が多く、人によって信仰しているものが異なります。そのためその人にとってこの考えは良いのだろうかと深く考えてしまいがちですが、ターミナルケアを受けるようになると宗教についてこだわりがなくなり、その分心の支えとなるものとして様々なことを受け入れられるようになります。
ターミナルケアにおいての宗教の位置づけは、これから来る死について受け入れることであり、修行というとらえ方ではありません。終末期の患者が受けた宗教的ケアの結果として、とても役に立ったと答えた人は多く、その中で多かったのが宗教的な音楽を聴く、牧師や僧侶などに会う、礼拝や仏事に参加するが30%を超えました。逆に病院などが発行している宗教的な刊行物はあまり役に立たなかったと答えた人が6割近くを占めており、人との話し合い、触れ合いが効果をもたらすことが分かっています。無理やり押し付けるのではなく、自然な形で受け入れられる環境が大切になります。

まとめ

がんになると終末期は体と心の痛みがひどくなり、自分を見失ってしまうこともあります。できるだけ生活の水準を下げないようにし、心を穏やかにそして体の痛みをなくすために、アニマルセラピーや音楽療法、そして宗教的なケアが行われています。
どの方法も最初から受け入れられるわけではないので自然な形で参加できるのが大切であり、決して無理強いしないことが大切です。考えや行動が押し付けにならないよう注意し、何をその人が求めているのかを探っていくことも必要となります。

投稿者:終末医療学術集会

認知症の終末医療 – 家族が考えるべきこと、するべきことについて

認知症とは脳の病気や障害などの原因で認知機能が低下する状態になります。理解力や判断能力が劣ることで、日常生活に支障が出て介護が必要になるケースや記憶をなくすケースもあります。若年性の認知症もあるので、高齢者だけがなる病気ではありません。認知症の患者を抱える家族は、とても負担が大きくなります。介護をする中で精神的な負担を抱える方が多く問題になっています。家族が考えることややるべきことなど紹介します。

認知症でケアを受けることは可能です

認知症の症状が進んでくると介護が必要な状態になります。国の制度である介護保険制度を利用することができます。介護保険制度は日本国民が40歳以上になったときに加入をしなければならない保険になり義務づけられています。介護保険サービスは40歳以上の方で介護保険料を支払っている方が対象になります。

介護保険のサービスは、介護にかかる費用の軽減や心身の負担を減らすことができます。このサービスを利用するには、要介護の認定をうける必要があります。要介護認定は、段階があり、要支援1・要支援2・要介護1から5までに分類されます。分類によってうけることができるサービスが変わってきます。要支援1の場合は、週1回の介護予防訪問や月2回のショートステイを利用することができます。要介護3以上に認定されると特別養護老人ホームで、身体のケアを含む介護を利用することが可能になり、終身利用することができます。

認知症を発症した場合に、症状が進む前しておくこと

認知症は病院の検査で判断することができます。神経心理学検査や認知症検査をうけて認知症の種類や進行度を判断していきます。認知症を発症した場合は、早期の治療が大切になります。症状が進行する前に適切な処置をすることが大切になります。認知症の予防をすることで、認知症と判断された後でも進行を緩やかにすることができます。

認知症の一種になるアルツハイマー認知症や脳血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害から引き起こる可能性があるので、それらの生活習慣病を予防したり、症状のコントロールをすることが大切になります。血糖を下げるような食事や塩分を控えめにする食事などを積極的に摂取することで、生活習慣病の症状の改善に繋がることになります。適度な運動も必要になり、関節などを動かすように意識することで、筋力の低下を防ぐことができます。運動をすることによって、脳に刺激を与えて活性化させることができます。

終末期医療などについて

認知症は初期から始まって中期・末期という経過をたどっていきます。重度の認知症になると家族の名前がわからなくなったりします。嚥下障害がおこるようになり、失禁などの症状もでてきます。歩行障害や運動障害も引き起こるので、重度の認知症の場合は寝たきり状態になります。このようにならないためにも初期の段階から対処をする必要があり、遅くとも中期の時点で治療をすることができたら、認知症と共存しながら晩年を過ごすことができます。

そのまま終末期医療の準備をしないまま重度の認知症になった場合は、家族としては、最期のことを話し合う必要があります。家族でできることやできないことなどを考えて判断します。自宅でのターミナルケアをするのか、施設でターミナルケアをしてもらうのか、考えておく必要があります。自宅でのターミナルケアは、在宅医療や訪問看護・訪問介護などを利用することになり、家族が中心となって介護をおこなっていきます。

認知症における家族の負担

認知症における家族の負担

認知症の方を介護することは家族にとってさまざまな負担がのしかかってきます。精神的な負担や経済的な負担があるので、必要なときに必要なサービスをうけることが大切です。認知症があって身体的に問題が無い場合、身のまわりのお世話だけではなく、目が離せないといったことがあります。徘徊によって迷子になってしまったり、事故に合う可能性も高くなります。

目を離せない状態が続くので、介護をする側はストレスを抱えながらお世話をすることになります。要支援や要介護が低いレベルなら基本的には家族が介護をすることになり負担が大きく大変です。そうならないためにも、早い段階で認知症の診断を病院でうけることが必要になります。認知症は薬物療法とリハビリテーション・非薬物療法の治療法があります。このような治療を早い段階で、始めることで、進行を遅らせることが可能になります。認知症の介護は一人では大変なので、家族で協力し合うことが必要です。

まとめ

認知症になると、さまざまな支障がでてきます。症状が初期の場合に早い目に医師の診察をうけることがもっとも重要になります。また末期の認知症の場合は、最期のことを家族と話し合いながら決めていく必要があります。認知症では意識確認が難しくなるので、延命治療の問題では家族の意思にゆだねられます。終末期医療をどのようにするのかなど本人の意見を取り入れることができる場合は、本人の意思を尊重することが大切になります。