月別アーカイブ 3月 31, 2021

投稿者:終末医療学術集会

終末医療のデメリットは?在宅・入院それぞれの観点から解説

人間は年齢とともに寿命が近づいてきますが、人が亡くなる原因の1つは病死になります。特に40代以降は病気が原因で亡くなる割合が増えていき、30代までに多かった交通事故や自殺による死亡件数を上回ることになります。60代以降は顕著で、病死の割合が死亡原因の7割以上を占めているのが現状です。

一昔前は、終末医療の考え方はあまりありませんでしたが、最近では終末医療を検討している人も増えています。この場合メリットはたくさんあるもののその反面デメリットもあるわけですが、デメリットがあるとすればどのようなことでしょうか。

かつては、病気、加齢、死は本人とその家族、そして、彼らに近しい人たちの問題であり、基本的には私的な領域に属するものであった。しかし現在は、人々の終末に至るまでの人生に医療・福祉のプロフェッションが関わり、人々が、病院、自宅でこれらの人たちに見守られながら死ぬことが通常になっている。

https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/c05.html

終末医療の目的とそのデメリットは

終末医療のデメリットの前に、終末医療とはどのようなものか知っておくことが必要です。1番の特徴は、人生の最後を充実したものにするための医療になります。昔ならば、最後まで入院生活を送り少しでも延命させようと考えている傾向がありました。確かに延命させることは重要であるものの、これから生き続ける可能性がないと分かった段階で、延命処置は患者にとっても家族にとっても苦しみに変わってしまいます。そこで、延命のための治療は行わず、病気による痛みなどを取り除き残りの時間を穏やかに暮らせるような仕組みを整えたわけです。これにより、人間らしい最期を迎える点はメリットといえますが逆にデメリットも考えられなくはありません。

在宅におけるデメリットがあるとすれば、身体的なケアが大変なことです。例えば、終末期患者の中には末期がん患っている人が少なくありません。末期癌を患うと身体中が痛くなるためこれを定期的にケアしなければなりません。一般的には、モルヒネを注射で打つことで痛みを和らげるわけですが、自宅にいるとこれがなかなかできない可能性もあります。少なくとも、専門の医療的な知識を持った看護師や医者が連日のように訪問しなければなりません。

点滴の問題を考えておく

在宅で終末期医療をする場合には、点滴の問題も重要になります。病気によっては、点滴をすることで大きな手術をすることなく最期を迎えることもできます。点滴に関しては、定期的に液体を取り替える必要があります。場合によっては、患者が動いて針が外れてしまうケースもあるでしょう。この時、在宅中の家族が気付けるかどうかはとても重要です。病院の場合であれば、ナースコールのボタンを押せばすぐに看護師さんや医師が駆けつけてくれます。

しかし在宅の場合はたまたま自宅にケアをしに来ている看護師等がいなければ、なかなか気づいてもらえないだけでなく、気が付いても対処できない可能性もあります。酸素マスクをする場合は命に関わるため、継続的に家族がそばにいなければならなくなるでしょう。患者自身が最期は自宅で迎えたいと希望を出していたとしても、医療に関する素人である家族がどこまで対処をすることができるかで在宅で最期を迎えることができるか決まるところです。

専門家は多い反面不満も出る

病院で最期を迎える人は多いですが、最近は少しずつ在宅で最期を迎えたいと考える人が増えてきています。そして実際に、在宅で最期を迎えた人が増加しているのも事実です。病院で終末医療する場合、自宅に帰りたいけどもなかなか変えることができない点に於いてデメリットがあるといえます。もしこれが、絶対に入院をしなければならない状態であれば自宅に帰ることが不可能のため、患者自身も諦めざるを得ないところでしょう。

しかし、緩和ケアなどをしている状態のときには寝たきりの状態よりも行動範囲が広くなります。普通の人よりは制限は受けるものの、ベッドの上に寝たきりの状態ではないため自宅に帰りたいと欲が少なからず出てきてしまい、それが不満の源になります。もちろん病院にいることのメリットはいくつもあるでしょう。医療に関する専門家がたくさんいるため、いざと言う時でもすぐに対応できる事は最大のメリットといえます。ですが、せっかく穏やかに人生の最期を迎えるならばやはりペットなどがいる自宅で過ごしたいと考え、後悔をすることはあるかもしれません。

医療費が高くなりがち

医療費が高くなりがち

終末期患者の多くは、少なからずお金の事を心配しています。長く入院すればするほど、それだけお金がかかるからです。入院をした状態で終末期を迎える場合、心のどこかでお金の心配をしている人が多くそれが心残りと考えてしまいます。特に家族がいる場合は、家族に負担をかけてしまい申し訳ないと考えるようになり、心苦しくなるかもしれません。この点が、入院をして最期を迎えるときのデメリットといえます。もし可能であれば、お金があまりかからない自宅療養に切り替えたいと思うでしょう。

ある程度自由に行動ができる身分ならば、自宅に帰って金銭的な負担を減らしたいと考えるのも無理はありません。これを乗り越えるためには、体調が急変した場合の対応策を考えておきたいところです。一日中医療機関の人が、自宅に訪れることができる体制が整えられていれば問題ないです。しかし、現実的にはまだそこまで制度が整えられておらず、昼間の時間帯のデイケアのみに限られるでしょう。患者本人にとっても、迷いが生じる場面といえます。

まとめ

終末期医療の段階に入った場合には、在宅で過ごす場合と入院している場合の2つのパターンが考えられます。この点に関しては、メリットだけでなくデメリットがあります。在宅の場合のデメリットは、医療に詳しい人が家に常駐しているわけではないため、いざと言うときに対処できないことが考えられます。

また入院している場合には、金銭的な問題や自宅に帰りたいの欲求などもありそれが不安の源になりがちです。そして在宅と入院のどちらを選んだの良いか迷いが生じて、精神的な負担になることもデメリットになります。

投稿者:終末医療学術集会

終末医療の歴史|緩和ケア、ホスピスケアの本当の意味とは

医療技術の進歩は目を見張るものがあり、かつては治療方法すら発見されていなかったような病気でも、症状をコントロールできたり治癒を見込めるようになることも珍しくありません。しかしどれほど医療が進歩しても治療できないシチュエーションに直面することはあり得ます。通常の治療の選択肢が尽きた患者にどう向き合うか、かねてよりこの課題に医学は向き合ってきました。その難問にたいする回答のひとつが終末医療の発展と展開にあります。

日本での緩和ケアやホスピスの淵源と受容

一般医療では疾患と特定し治療することで、救命をはかったり症状を緩和するなどして患者の早期社会復帰を当然の目標としています。これに対して終末医療は治癒の見込みがなくなった段階での医療のあり方を問うジャンルです。

ここに終末医療とは、生命の危機が不可避の患者を対象にQOL(生活の質)の維持を目標に全人的アプローチでケアを提供することを意味しています。日本に終末医療が登場したのは比較的歴史が浅く、終末医療を正面から取り上げる緩和医療学会が設立を見たのは1996年のことです。

歴史は浅いとはいうものの、医療現場における緩和ケア病棟やホスピスの普及は急速に進んできました。1990年には全国で5施設を数えるのみだった緩和ケア病棟も、017年には394施設にまで増加しています。これまで緩和ケア研修を終了した医師は平成29年9月時点で既に10万人を超えており、実にドクター全体の1/3に達しています。

日本の緩和ケアの医療制度への取り込み

日本で緩和ケア病棟やホスピスが全国レベルで普及したのは比較的最近ですが、終末医療に関心を寄せる医師は一定数存在していました。日本初の独立型ホスピスが登場したのは、1981年静岡県浜松市、聖隷三方原病院になります。母体となってのは1930年にクリスチャン有志により設立をみた、小さな病舎でした。

1973年には精神科医の柏木医師により、大阪氏の淀川病院で末期患者のケアを専門的に提供するチームが作られました。柏木医師は末期がん患者に向き合う中で、肉体的苦痛はもちろん精神的苦痛や経済的苦痛などの多彩な悩みに医師一人の力で対処することは困難だと気づき、アメリカ留学で学んだ「OCDP(死に行く患者への組織的ケア)」をヒントにチームを結成したわけです。その後柏木医師は一般病棟でのケアに限界を意識するようになり、1979年にはホスピス設立準備委員会を院内に設け、1984年には日本初の院内病棟型ホスピスの誕生をみました。

緩和ケアやホスピスの現状

緩和ケア病棟やホスピスが、日本の公的医療制度に組み込まれたのは1990年のことでした。この年には公的健康保険で「緩和ケア病棟入院料」が新設され、国が定めた基準を充足した場合に患者一人当たり25000円が保険者より支払われるようになりました。緩和ケア設立にインセンティブが生まれたことで、ホスピスや緩和ケア病棟新設の流れは全国区の広がりをみせます。

1994年には緩和ケア病棟やホスピスなどの開設の設立窓口が国から都道府県知事に委譲され、届出施設数もさらに増加をみます。2002年には健康保険に「緩和ケア診療加算」が新設。しかし基準を充足するのは難しく緩和ケアチームはそれほど増加しませんでした。

潮目が変わったのは2006年の「ガン対策基本法」の制定と施行にあります。各地のがん診療連携拠点病院に緩和ケアチームの設置が指定要件とされたことです。1980年以降日本人の死因のトップがガンであることを踏まえると、緩和ケアの一層の充実が期待されています。

今後解決するべき課題とは

今後解決するべき課題とは

日本全国で緩和ケアやホスピスが普及したことで終末医療のあり方は大きく変貌しました。しかし他方で課題もいくつか浮き彫りになっています。それは緩和ケアは、「終末期に行うもの」という根づよい誤解が存在することと、疼痛ケアが十分に行われていないことが明らかになっているということです。

緩和ケアはそもそも疼痛や苦痛を緩和しQOLの維持向上に主眼を置くものです。必ずしも死期が迫っていることを前提としないでより早期から緩和ケアの介入を検討してしかるべきといえます。加えて日本では先進国のなかでも医療用麻薬の使用量が明らかに少ない事実が指摘されています。医療用麻薬への偏見が作用している可能性がありますが、患者自身の痛みが十分にコントロールされていないことのほうが重大な問題です。

また終末期を自宅で迎えたいとの意向をもつ患者が増加している一方で退院後に自宅で緩和ケアを継続するシステムも人員も不足しており、入院しないと従前な緩和ケアを受けることが難しいというのも問題点と認識されています。

まとめ

昨今の医療技術の進歩は数多くの病気の克服を可能にし、平均寿命を大きく伸張させました。しかしどれほど医療が進歩しても治療で改善するには限界があり、死期がさしせまった患者に対しいかなるケアを提供するべきかの課題に直面することがあります。

この課題に正面から向き合うのが終末医療であり、緩和ケアやホスピスで実践されています。日本国内でも緩和ケアやホスピスは普及しましたが、必ずしも積極的に活用されていなかったり、疼痛管理が不十分・在宅ケアで対応するのが困難などの課題も意識されるようになっています。