安易なホスピスにNO。後悔する前にデメリットを理解しよう

投稿者:終末医療学術集会

安易なホスピスにNO。後悔する前にデメリットを理解しよう

ホスピス・緩和ケアに関して、何となく良いイメージが出回っているため将来はいずれ入りたいと考えている方も少なくありません。一方で医師の紹介がなければ入れず、そもそも空きを待つ時間がかかったり費用も決して安くはないなど、デメリットとなるポイントもあります。ここではホスピスの基本的な知識を学びつつ、その特徴やメリット・デメリットを把握した上で後悔のない選択をとれるよう、その対策方法などに関しても解説します。

そもそもホスピスとは?

ホスピスとは、生命を脅かす疾病に罹患している患者とその家族への苦痛を、最小限に留めることを目的としたケアのプログラムおよび概念です。疾患の初期から痛みを含めた身体的な問題に加えて、心理社会的・スピリチュアルな問題に対し、正しく評価することによってそれらが障害とならないよう予防・対処を行います。これにより患者とその家族を含めた、クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を高めるためのアプローチと言えます。

ケアの主幹は人が生きること、生命を尊重して死を自然なものと認めることです。そのため死を引き延ばすことは当然、反対に早めることもありません。疾患によって発生する痛みや、不快・苦痛な症状から解放することも条件です。

身体的なものに加えて、精神的なケアも同様に重視されます。精神および社会的な援助を行って、患者に最期の時が訪れるまで積極的に生きていける意味を見出せるよう、支えることも重要です。患者は一人ではなく家族と共同体であるため、闘病中はもちろん死別した後のケアを行うこともホスピスのプログラムの一貫となります。

ホスピスのデメリット

ホスピスの基礎概念を見ると、患者とその家族に良い治療と思いがちですが一方でデメリットも存在します。まずはホスピスに入るまで、時間がかかってしまう点が挙げられます。日本全国においては210ほどのホスピスの施設が存在しており、用意されている病床数は4200前後しかありません。

またホスピス・緩和ケア病棟におけるケアの対象、すなわち医療保険制度による承認施設に入ることができる患者にも条件が定められています。悪性腫瘍と後天性免疫不全症候群の患者が主な対象となっている他、入るには医師の紹介が必要な点もデメリットと言えるでしょう。

なおホスピスには指定の施設に入る以外にも、訪問診療・介護・看護を含む在宅ケアや、一般病棟に組み込まれた緩和支援ケアチームによるケアなども含まれます。必ずしも末期(治療不可能)患者であることが条件ではない、という点は留意しておきましょう。

ホスピス施設に入る上で、費用が必要な点もデメリットの1つとして考えておくべきです。30日未満と60日以内、61日以上でそれぞれ料金は変わってきます。通常の入院と比べて費用がかさむ点は、念頭に置いた上で選択しましょう。

ホスピスにおける課題点

ホスピスの課題点として挙げられるのは、患者に真実が知らされていない可能性がある点です。患者が真実を知った上で、どういった選択をとるのかということを予測しながら医師はケアをしなければなりません。また医師側は、家族に最終的な判断をさせてはならないという使命を帯びています。患者との死別後に、家族の心の中に後悔が残る可能性が大きくなるからです。すなわち医師にケアの舵取りを任せることとなり、専門家にコントロールを委ねている状況とも言えます。医師と家族側、患者との意思・希望とのすれ違いが生じないかという点は現在も大きな課題です。

なお患者が主役である終末期のケアであるにもかかわらず、患者より家族の意向が優先されることもあり、その点も問題視されています。家族に納得される最期を用意しなければならないこと、家族に対するケアは患者の存命中に始まっているとされる意見から来る問題です。患者のその人らしさを尊重する上で、家族の意見が重視される点もその要因となっています。

対策方法・選択に後悔しないために

対策方法・選択に後悔しないために

ホスピスにおけるデメリットを把握した上で、対策に考えられるのは家族でしっかりと話し合うことでしょう。可能な限り治療を続けるのか、身体的および精神的に解放した状態で心豊かに最期を迎えてもらうのかを、家族の一人一人が十分に考えることが大切です。良さそうなイメージがあるからと安易にホスピスを選択するのではなく、患者や家族のことを考えつつ慎重に選ぶようにしてください。

費用や施設に入るまでの時間を抑える策として、在宅でのターミナルケアも1つの選択肢として挙げられます。在宅のターミナルケアとは、自宅で医師・看護師の訪問を受けながら残された日々を過ごすという形のケアです。酸素吸入や点滴などの処置、病状が悪化した際の対応などは医師・看護師に任せざるを得ません。寝たきりになった場合は、数時間ごとに身体の向きを変えなければ床ずれを起こしてしまいます。このように在宅のターミナルケアは、QOLを大きく下げる危険性もはらんでいることを覚えておきましょう。

まとめ

生命の最期を尊重し、死を自然なものとして受け容れるホスピス・緩和ケアでは、痛みや精神的苦痛から解放して心豊かな最期を迎えることを目的としています。一方でホスピス施設に入るには医師の紹介が必要であったり、入居に時間や費用がかかる点も忘れてはいけません。安易にホスピスという選択肢をとるのではなく、残された時間を悔いのないよう患者・家族ともに過ごしていくためにも、しっかりと話し合った上で選ぶことが大切です。

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